あ、痛いです、それ
なーに、どしたん?浮かない顔しちゃって。あー、あれか。うんうん、分かるよーあんなん指されたって答えらんないよねえ。雪子クラスじゃないとムリだって。ま、あたしは花村のおかげで命拾いしたんだけど。花村さまさまだよ、ありがとね。え、なに?違うの……ふうん。あーもー、シャキっとしなよ。なんかよく分かんないけどさ、男でしょ?あ、そーだ。気合入れたげよっか。こういうのはさ、これだーって切欠があった方が切り替えられるもんなんだって。まあまあ、遠慮なんてしなさんな。ビシーっと入れたげるから、ビシーっと。

「花村、歯ぁ食いしばれー」

 背筋に力を入れたところに死角から、勢いよく振り下ろされた両手の平は頬に当たってバチンと大きな音をたてた。準備をしていなかっただけに、予定外の場所に受けたダメージは、いろんな意味で大きい。

「って、いってえよ、里中。なにすんだ」
「え、そんなに痛かった?手加減したんだけどなあ」
「手加減してそれかよ、どんだけ怪力なんだよ」
「人を普通じゃないみたいに言わないでよね」
「普通じゃねえだろ、普通じゃ。だいたい普通は、背中だろ」
「なーに言ってんの。気合注入といったら、ビンタでしょ。イノキさんも言ってるよ」
「それは、闘魂」
「似たよーなもんじゃん」
「ぜんぜんちげっつの、たく、オヤジにもぶたれたことねえのに」
「お!さっすが、お坊ちゃんは育ちが違うね」
「アムロだよ」
「は?なんの話?」

んー、でも良かったよ。花村、ちょーし出てきたんじゃない?ほら、あんたがさ、あんな風にがっくりしてるの似合わない、てかこっちのちょーしまでおかしくなりそうじゃん。こんなこというのアレなんだけど、さ。やっぱ、あたし、みんなには笑っててほしいんだよね。そしたら、あたしも笑ってられる、ていうか。あんなことあって、すごい落ち込んだし、ドンゾコってときもあったけど、そういうのあったからこそ、今は、笑ってたいっていうか。

「笑っててほしい、っていうか……ねえ、まだ痛い?」
「いてーよ」
「マジ?おかしいなあ」
「おかしいのは、お前の方だろーが」
「あ、また!またいった!ったくー人が心配してやってんのに」
「あーいてぇ、すげえ、いてぇ、いってぇなあ」

 ぐにゃり、ぐんにゃり。撫でられるよりは強く、押しつぶされるには弱すぎる力で、両方の頬を捏ねくりまわされるのは、イタイ。けっこう、コタエル。ヤルセナイ。願わくば。イタイ発言をしてしまう、その前に、どうか。

どうか

「んで、いつまで触ってるつもり、俺のこと」

ナア サトナカ オマエ ホントハ オレノコト スキナンジャネエノ