「おはようございます」
「んーおはようさん」
「ところで、」
「ちょお待て。ところで、てどっから繋がった」
「どこにも繋がらないよ。ところでは話題転換の接続助詞」
「んなこと聞いてへんわ、ぼけ。おかしいやろ、おはようの直後にところで、は」
「そうかな」
「そうや」
「それより」
「それより、・・・・・・まあええか。なに?」
「昨日はどこにいたの」
「またいきなり。唐突にも程があるぞ」
「どこでもいいんだけどね」
「だったら聞くなや。なんやのん、お前」
「なんでもないよ」
「熱でもあんのか、救命士」
「いたって良好。それに、ほんとうにどうでもいいんだ、私は」
「意味深な言い方すな。俺がどこいようと、お前にも、誰にも、関係あるはずがない。ちゃうんか?」
「そうだね。じゃあこの話は終わり」
「あーほー。そこまで聞いてもうて、終わりです、はいそうですかあ、てなるわけないやろ、言え」
「横暴な」
「うるさい、はよ言え」
「じゃあ、言うけど」
「そうせえそうせえ、さっさとせえ」
「嶋の居場所を知らないかって真田隊長と五十嵐機長が」
「!!!」
「昨日あちこちに電話をかけていたみたいだけれど、」
「あーあーあーあー!やっぱり言うな!」
「なにか心当たりはあるかい?部屋にいないって私の部屋にまで来たけれど」
「聞こえへんぞーなーんも聞こえへんからなー」
「約束をしてたわけじゃないんだったら、なにか大切な用事があった」
「あるか、そんなもんあってたまるか!」
「のかもしれないし。早く連絡をとった方が良いんじゃないかな」
「黙れ、黙れ!みなまで言うなー!」
「もう終わったけど」
「終わったんかい!」
「うん」
「・・・・・・・・・・・・」
「嶋?」
「・・・・・・今の話は、俺は聞かなかったことにしよう、うん」
「あのねえ」
「せやせや。俺は知らない。あん人たちが来たとか探してたとか、なーんも知らん」
「往生際の悪い」
「んなもん関係ない。もう決めた!決まった!なにも言うな!」
「別にいいけど。そう、私はいいんだよ、私は」
「いやらし言い方やな、ほんまにお前は・・・・・・まあええ。だいたい、なんで非番の日に押しかけてくんねん。迷惑な」
「私が知るわけないでしょう。結果的に会えなかったんだから、嶋に迷惑はかかってないし」
「そんな問題とちゃう。しかも、二人で、てところが大問題や。なに考えてはんのやろ」
「だから、用事でもあったんじゃないの?それに一人だろうが二人だろうがいいじゃない」
「甘い。一人でもあかんけどな、二人だともっとあかんねん。あん二人が用事なんて可愛らしこと言うわけが・・・・・・て、話をむしかえすな、高嶺」
「自分で戻したくせに」
「ったく、高嶺のせいで朝から最悪や」
「私のせいじゃないでしょう」
「お前のせいやなかったら、誰のせいや誰の」
「そうだねえ・・・・・・ああ、真田隊長と五十嵐機長」
「考えるな。それしかないやろ、それしか。まったくあん人ら・・・・・・あーほんまいやや。話題を変えろ、変えてくれ」
「おはようございます」
「うんうん、おはようご・・・・・・ごっ、え、あ、はいっ!?」
「「おはよう」」
こっちに歩いてくる隊長と機長の足取りがやけに速く感じるのは気のせいだ。
こっちに歩いてくる隊長と機長の顔がいつも以上に読み取れないのもきっと気のせいだ。
そして、その瞬間。俺の足があろうことかあん二人に向かってフルスピードでフル回転したことなんて。
気のせい以外のなんでもない。頼む。そういことにしといてくれ。後生やから、なんも言わんと見逃してくれ。
ああもうほんまもう、ありえへんって! なにしとんの、俺!
「おはようございますきのうはほんとにすんませんでしたっ!」